
かのや移住×仕事体験ツアーを通して
参加者伊藤わかさん
現状に迷っている人がいるならば、ただ少しの勇気と気合いを持って新しいことに挑戦してみてほしい。
ただ漠然と「このまま会社員を続けて、子供産んで、家族のためにほどほどに仕事してこのままなんとなく歳をとっていく生活でいいのかな」と思っていた。
 鹿児島の鹿屋へ行くことになったのはそんなもやもやした気持ちを抱えている頃だった。
 たまたま求人サイトを見て、たまたま見つけた求人。鹿屋で個人事業をしている方が出していた後継者募集の求人。
 鹿屋という土地に住みたかったわけでも、移住をしたかったわけでもないけど。
 実際に求人を見つけたときに初めて鹿屋という土地を知った。
 ただ、なんとなくその求人が気になって…応募するか散々迷って…。
 応募期限最終日に迷いに迷って応募ボタンを押したのを覚えている。
 このまま行かずに、見ずに諦めたらずっと後悔しそうだったから。とりあえず実際に見て、話しを聞いてから決めればいい!
 そんな思い付きから、2 泊 3 日の「かのや移住×仕事体験ツアー」に参加することになった。
鹿児島行きの日はあっという間に迫り、降り立った鹿児島空港では旅プロモの入佐さんが出迎えてくれた。
 2 泊 3 日の「かのや移住×仕事体験ツアー」のプログラムは全て旅プロモの入佐さんが、スケジュールを決めてくれたため、全てお任せ状態で付いていくだけだった。
 入佐さんとの出会いに始まり、後継者募集をされていたご夫婦との親睦も兼ねた食事会。
 そして、実際の仕事体験。加工食品の会社だったが、夫婦 2 人で営んでいるため加工・梱包・出荷まで全て手作業。
漬物の梱包作業や味噌作りを体験させていただいた。
 2 泊 3 日の鹿屋での生活はあっという間で、名古屋以外で暮らしたことがない私にとっては普通の旅行とも一味違う「かのや移住×仕事体験ツアー」は新鮮だった。
そして、名古屋に帰ってきてもやはり迷っていた。
 ただ、鹿屋に行く前と違い、今回は事業を継承するかどうかの判断をしないといけない。
 一から起業するのとは違い、機材や販路はあるから事業を継承するだけで、かなり低リスクで独立が可能。
 だが、ほとんどの作業が手作業のため肉体労働も多く、1 人で生産から出荷までの作業を行うのは正直厳しそうだった。
 そして、結婚もしている状況で単身で行くのか、夫婦で移住するのか。
 旦那が 1 人っ子長男のため、実際のところ永住という意味での移住は厳しいとも感じていた。
そして、旦那と相談の上、再度 2 人で鹿児島を訪ねた。
 2 度目の訪問の際も仲介を入佐さんにお願いしたら、快く引き受けてくれた。
 立て続けの訪問だったため、安く行ける方法を紹介してくれたり。
 また、旅行も兼ねての訪問だったため、鹿児島オススメの温泉宿もピックアップしてくれ、希望を伝えた数十分後には予約完了の連絡が…超絶仕事早い。
 社会人としてこの仕事の早さは見習わなければと常々思います…。
そして、鹿児島を 2 度訪問し、出した結論は…今回は事業を継承せず鹿児島にも行かないという選択。
 辞退の理由は一言では片付けられないけれど、会社員としての安定した収入を捨ててまで自営業になる覚悟ができなかったし、見知らぬ鹿児島の土地のために今の生活を捨ててまで必死になれる覚悟ができなかったから。
 結局鹿屋への移住はしなかったので、名古屋に戻った後もなにかが特別に変わったということもないけれど…。
 ただ不思議と後悔はない。
 自分で現地に足を運び、自分の目で確かめて行かないと決めたから。
 そして、私は生まれ故郷の名古屋が好きなんだなと思った。でも、きっとそう思えるようになったのも鹿屋に行ったから。
 ただ、あのとき「かのや移住×仕事体験ツアー」に応募しなかったら、1 度も鹿屋に行かなかったら、あのとき行っていればと、この先の人生ずっとどこかで後悔することになっていたと思う。
 そして、ずっと現状が嫌だとなんとなくもやもやしたままで、地元が好きなんだなということにも気付けなかったと思う。
 そして鹿屋で出会った入佐さんや後継者募集をされていたご夫婦と出会い。
 これも鹿屋に行かなければ恐らく死ぬまで出会うこともなかった人たちだと思う。
現状に迷っている人がいるならば、ただ少しの勇気と気合いを持って新しいことに挑戦してみてほしい。
 それは大それたことでなくてもいい。
 ただしばらく旅をしてみるのもいいかもしれない。
 転職して新しい仕事に挑戦してみるのもいいかもしれない。
 セミナーなどに参加して、仕事や学校以外の知り合いを作るのもいいかもしれない。
 いつもと少し違うことに挑戦して、なにかが劇的に変わることはなくても、なにかのきっかけにはなるかもしれないから。
 だから、私は感謝している。
 鹿屋で新しく出会った人々に。
 ほんの少しの勇気を持って、応募ボタンを押した 1 年前の私に。